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未来シナリオ・年表の作り方

未来シナリオ・年表とは

このデジタル社会の未来シナリオは、「未来洞察」の方法論を活用して作成したものである。未来洞察とは、将来の不確実性に備えるため、また、持続的な成長を図るため、社内外で今後起こり得ることをあらかじめ考え、未来の行動の見通しを立てておくための方法論だ。
 洞察とは「本質を捉え新たな観点を獲得する」ことを指す。未来洞察のプロセスでは、さまざまな「未来の兆し」を示す情報から導き出した、「こうなるかもしれない」という未来像を策定することで、これまでの社会とは異なる、新たな社会変化の仮説を構築し、新規事業の構築やビジョン策定に活用する。
 したがって、ここで策定しているシナリオは、「必ず発生する未来」ではない。可能性があるが不確実な未来だ。このような「かもしれない未来」を数多く想定し、その未来の実現(や回避)に取り組むことこそが、企業・組織の変化対応能力を拡大することだと考えている。

未来シナリオ・年表を作成するには

不確実な社会変化のシナリオを作成するには、「未来の変化の兆し」を示す情報を収集することが不可欠である。この変化の兆しの情報を、「スキャニング・マテリアル」、手法自体を「スキャニング手法」と呼ぶ。
スキャニング手法自体は誰でもできる開かれた方法であるが、ここでは、日本総研で行うスキャニングの手順と例を紹介する。

手順

1.兆しの抽出

新聞雑誌の記事などから「これは非連続な未来の芽ではないか」と感じた記事をピックアップする(世界中から分野を問わず集める)。

2.スキャニング・マテリアルの作成

記事の要約とコメント(未来への示唆)、タイトルをつける。

3.社会変化仮説(シナリオ)の作成

複数のスキャニング・マテリアル(通常、1回のワークショップで100~150個ほどを使用)を見て、KJ法を使った気付きに応じてクラスター化し、タイトルをつける(これを想定外な社会変化仮説:未来シナリオと呼ぶ)。

自社版未来シナリオ・年表を作成する

ここで提示しているのは、あくまで我々が想定した未来シナリオだ。作成者を変えたり、別の兆し情報(スキャニング・マテリアル)を活用したりすると、まったく別の未来シナリオが想定しえる。このように作られた未来シナリオ、およびシナリオの年表化は、以下の効果が期待できる。

1.不確実性への対応力強化:未来に対する「構え」を多様にする

他者が作った「トレンド」を参照しているだけでは、不確実性が発現した場合に(他者同様に)対処できない事態に陥ってしまう。蓄積された情報だけでなく新たな情報を取り込んで未来を想像し、未来に対する多様な「構え」を持っておくことで、不確実性に対する対応力を強化することができる。

2.意思疎通能力の強化:未来を「共通言語化」する

人によって、蓄積されている情報の範囲は異なる。知っていることの領域が異なる人同士の対話には、想像力を働かせる上での前提条件が異なることから、構造的に齟齬が生じやすい。未来シナリオ・年表の作成によって、「知っていることと知らないことの境界」を明確にすることができ、他者との意思疎通能力を強化することができる。


 未来シナリオの作成自体は難しいものではない。ぜひ皆さんも、自社の変化への対応力強化のため、他人が作った未来シナリオを参照するだけではなく、自社なりの未来シナリオ・年表を作成してほしいと考えている。

石野 幹夫未来デザイン・ラボシニアマネジャー
未来洞察、スキャニング、エスノグラフィ、デザインリサーチ、プロトタイピング、サービスデザイン、及び左記関連フィールドワーク、ワークショップの企画・運営に従事。
田中 靖記未来デザイン・ラボシニアマネジャー
未来洞察手法を利用し非連続な社会を描くことを通して、企業のビジョン・中長期計画・新規事業立案を支援。デジタル・トランスフォーメーション支援も同時に推進。
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